新書の中の言葉

ー撮影前に錦之介さんを誘って祇園に飲みに行って、「チャンバラってどうしたらいいんだろうね」と聞きました。
 そしたら、「まあ、あんなもの、来るやつ斬りゃいいんだ」って簡単な理屈を言うんですよ。「主役は上手く刀を振ってさえいれば、カラミ(切られ役専門の役者)が上手く切られてくれる。あとは、彼らと呼吸さえ合わせられればチャンバラは大丈夫だ」と。それを聞いて随分と気が楽になりましたね。
 その「斬る」型の基本は「漢字の『米』を書くことだ」って言うわけです。まず、構えてから斜めに切り上げ、返す刀で斜めに切り下す。そして真横から斬り、最後は真上から切り下す。そうやって「米」の字を描くイメージで斬っていくと、綺麗な型になるということでした。

 「仲代達矢が語る日本映画黄金時代」 春日太一 PHP新書

新書の中の言葉

ー現実を説明すると称して、分かりやすい筋立てを作り、全体を見渡せる人物や立場を設定し、未来への処方箋を教えてくれるのは、たくさんの観客から金を吐き出させるために作られた「メインストリームの」映画や、「社会全体」を説明し理論化できると称する、見かけ倒しの「社会科学的」言説だけで十分だ。−

  「ミシェル・フーコー 近代を裏から読む 」重田園江 ちくま新書

本の中の言葉

ー僕はこれからの人生でなにか愚行を演ずるかもしれない。そして日本じゅうの人がばかにして、もの笑いの種にするかもしれない。まったく蓋然性だけの問題で、それが政治上のことか、私的なことか、そんなことはわからないけれども、僕は自分の中にそういう要素があると思っている。ただ、もしそういうことをして、日本じゅうが笑った場合に、たった一人わかってくれる人が稲垣さんだという確信が、僕にはあるんだ。ー
  「三島由紀夫おぼえがき」 澁澤龍彦 立風書房  対談・三島由紀夫澁澤龍彦「タルホの世界」
  

文庫本の中の言葉

 かつてモハメド・アリはこう言った。
「死に物狂いの練習に耐え抜いてきた者こそが、厳しい互角の勝負において、心の底まで降りて行って、勝利に必要な一オンスの勇気を持ってくることができる」

 「『黄金のバンタム』を破った男」 百田尚樹 PHP文芸文庫

PR誌の中の言葉

ー肝臓がん・肝硬変の女性の方でしたが、吐血したんですね。余命があと一〜二週間という方。そうすると家族がわっと集まって(動揺して)、もうこれ以上は無理だ、お母さんが倒れてしまう。だから、入院させましょう、入院すると安心だって言う。自分たちが安心なんです。だから「救急車を呼ぼう」ということになるんです。そこで「入院させると安心って誰が安心ですか。みなさんが安心なんですか」。もう少し突っ込んで「じゃ本人にとってはどうでしょう」と問います。「病院に行っても、病気そのものは治らないので病状は変わらない。でも病院に行ったらどうなるかつていうと、患者さんにとっては家族から離されるという孤独を背負わされることになります−」

「いのちを受けとめる磁場ー在宅ホスピス医の立ってる場所」米沢慧
   「グラフィケーション」NO184

本の中の言葉

説明なぞ必要だとは思わないんだ。絵画であれ、詩のような他の芸術の分野であれね。詩とか絵を説明することが出来るとは思えないんだよ。たとえば、ピカソは絵画を語ることがとても上手だった。彼は絵画についてあらゆる知的なことを言った。でもその彼だって、自分の天才を説明できたためしは一度だってないんだから!

  「フランシス・ベイコン 対談」ミシェル・アルシャンポー 五十嵐賢一訳 三元社

本の中の言葉

説明なぞ必要だとは思わないんだ。絵画であれ、詩のような他の芸術の分野であれね。詩とか絵を説明することが出来るとは思えないんだよ。たとえば、ピカソは絵画を語ることがとても上手だった。彼は絵画についてあらゆる知的なことを言った。でもその彼だって、自分の天才を説明できたためしは一度だってないんだから!

  「フランシス・ベイコン 対談」ミシェル・アルシャンポー 五十嵐賢一訳 三元社