詩集の中の言葉

「ー我々は言うだろう信じるところの人間は幸を得ると。
 かの人はそのように宣言して
 我は信じない何ものも。わけても『我々』という言葉を。
 おれは返答した。
 それはたいへん寒い。
 かの人はそう呟いてからしばらく悲しそうに首を振っていたが
 足をひきずりながらどこかへ帰っていった。−」
 
 「鳥人の朝」谷岡亜紀 思潮社