新聞の中の言葉

「賢者の言葉を紹介した本が売れている。ゲーテニーチェカフカといった先人の言葉をコンパクトにまとめたものが多い。こうした中、巷でよく聞きかれるのが『ゲーテは今から200年も前の人なのにこんなにすごいことを言っていたのか。驚きました』『ゲーテの言葉は今の世の中でも十分に通用しますね』といった類いの反応だ。『どれほど上からの視線なのか』と逆に驚いてしまう。たかが200年後に生まれたというだけで、一段上の立場から『昔の人なのにすごい』とゲーテを褒めるわけだ。これは近代ー進歩史観に完全に毒された考え方である。すなわち、時間の経過とともに人間精神が進化するという妄想だ。」

「賢者に学ぶ」適菜収 「産経新聞 6月8日」