本の中の言葉

「緑色とは本来的に死者に属する色なのだと、トリュフォーは説いている。豪奢にして人気のない納骨堂の祭壇に飾られた、無数の小さな光の集まり。その静謐と神秘には、『大人は判ってくれない』の一本の蝋燭以来、トリュフォーが内面に携え続けてきた炎のシンボルの大きな展開が見られる。映像とはつまるところ記憶の映像なのだという真理に、この監督は到達していたのだった。」

「蒐集行為としての芸術」 四方田犬彦 現代思潮新社