雑誌の中の言葉

「私は流れ者みたいに書いている」「素浪人みたいに書いている」「世の中のはじっこで、地下鉄の吊り革にぶらさがって書いている」「毎回、誰かにさよならを言いながら書いている」「いま書いている」「ここで書いている」「書くのは鉛筆がいい」「間違ったら消せるから」「間違ってばかりだから、わたしは」
 師匠の言葉はノートの隅に走り書きしてある。

 「波」8月号 新潮社 「ソラシド」 吉田篤弘