本の中の言葉

清水 −ただ、昔の作品を読むと、変な見方をしているなとか、いまだったらこう書かないと思ったりするけど、必ずしもいまの見え方がいいとは限らないからね。いまも不安定は不安定だよね。四十幾つになったらもうちょっと安定したものを書けているんじやないかと、あのころ思ったよ。そうしたらまるで違う。不安定だから書きつづけられるのかもしれないけど。
蜷川 おれもそれはある。二十幾つのときにたとえば倉橋(健)さん見ると、世の中の位置も大体どの辺にいて、安定して全部見えてる人に見えたけれども、いざ自分がその年齢になると、安定して何かを見られるというか、もうちょっとローリングが激しく逆さになってきた。−

清水邦夫の世界」白水社 「対談 出会いの場ー蜷川幸雄 清水邦夫