週刊誌の中の言葉

イチローは野球をビジネスとして捉え、自らの商品価値をいかに高めるかに腐心しているのである。野球を終えたあとの次のビジネスへの布石なのだろう。そう思えばイチローの記者会見でのコメントは計算と思惑に満ちていることがわかる。反して松井はどうか。すべてが泥臭く、そして正直である。計算と思惑で生きることのできない男なのだ。
 何もイチローのビジネス感覚を謗り、松井のその鈍重さを賞め賛えろというのではない。しかしこの二人に垣間見える現代の日本社会の構図を社会学的に比較して論じる記事は書けないのだろうか。
 イチローのメディア操縦術に振り回されたときに、松井はどれだけ愚直にメディアに対応したか、せめて今松井を励ましてくれないか。

 週刊文春 8月9日号 「新聞不信」 (翼)