週刊誌の中の言葉

ー「復興の書店」(稲泉連著・小学館、1470円)は、「3・11」の大津波福島原発事故で壊滅状態になった三陸と福島の街の本屋さんが絶望から立ち上がるまでのルポである。
 これを読むと、「本は不要不急の商品」という常識が根本から崩される。全国からお見舞い金や支援を受けた人に『実例お礼の手紙・はがきの書き方』が争って買われ、『心に響く「弔辞」』が飛ぶように売れたという話には、目からうろこが落ちる思いだった。
 また『80円100円おかず279品』といった簡便レシピ本や、パズル雑誌やゲーム本がよく売れたというのも、調理器具を津波で流されて簡単な食事しかつくれない主婦や、避難所暮らしでヒマを持て余している子どもたちのことを思えば身につまされる。

 週刊現代 佐野眞一 「リレー読者日記」