雑誌の中の言葉

インドネシアなど南方系の神話は、海の彼方に異界があるという水平的な構造を持つことが多いのですが、古事記出雲神話でも海の彼方からやってくる神がいたりして、水平的な世界感を持っています。古事記と南方系の神話とのつながりが感じられるでしょう。
 一方、古事記には垂直的な神話構造も含まれています。天上、地上、地下世界が垂直に構成されていて、天から降りてきた尊い人が地上の支配者になるという神話です。これは北方系の神話に多く見られる構成で、古事記の中では天皇家に関わる神話が似ています。
 つまり、古事記の物語には、南方系の水平的神話と北方系の垂直的神話が混ざり合って存在しているのです。日本列島は極東に位置しているので、西から東へ流れてきた神話も北から南へ流れてきた神話も全部受け止めて混ぜ合わせてしまうのかもしれません。

「てんとう虫」10月号 語り 三浦祐之 取材 伊藤英理子