本の中の言葉

 僕は太宰治という人が好きですが、なかでも一番好きな言葉は「平家ハ、アカルイ。(中略)アカルサハ、ホロビノ姿デアラウカ。人モ家モ、暗イウチハマダ滅亡セヌ。」という実朝のせりふです。
 これは『右大臣実朝』の中に出てくるのですが、僕がもっとも好きだと言っていいくらいの言葉です。いまの日本の社会にもあてはまるのではないでしょうか。いまの日本社会は、比較的明るいのですが、これは滅びの姿ではないかと思うことがあるからです。

 「真贋」 吉本隆明 講談社文庫