本の中の言葉

 いうまでもなく「前衛」とか「実験」とは近代的な劇形式や思考方法に対しての批判であり、より根源的な演劇批判である。おそらくその思考を実践しているのは、演劇以外のパフォーマーや、他ジャンルのアーティストたちかもしれない。むしろ演劇は先端意識において立ち遅れ、業界的な充足構造に開き直り、「前衛」的な意識を後退させてしまったと言うべきだろう。

  「見ることの冒険」 西堂行人 れんが書房新社