本の中の言葉

ー「猥褻」はむしろ、表現されざるもの、見えざるもの、かくされたもののなかにあるのではないか。
 そして、それらと対応する人間の心のなかにあるのだ。
 大胆に言えば、心の中にタブーを持つ人間ほど「猥褻」を感じるのである。子供は何を見ても「猥褻」を感じたりはしない。
 何かを見たくてしょうがないくせに、心の中にタブーがあって自らそれを禁じている人間があえてそれを見ようとする時、「猥褻」が試される。
 「愛のコリーダ」 大島渚 三一書房