処分する

どういう訳か、風邪ひいてしまった。で、一日部屋にこもっていると、「あれはどこだろう?」と思う。探すと見つからない。ものが多い。
母親を亡くしたロラン・バルトの「喪の日記」、1978年10月3日が思い浮かぶ。
「彼女は、深い慎みゆえに身のまわりの品をまったく持たない、というのではなく(禁欲主義とはぜんぜんちがうから)、わずかな品だけを持っていたー自分が死んだとき、自分の所有物だったものを、「処分する」必要がないように、と望んでいたかのようにだ」
こういう人になりたいものだと思う。ものが多いと、残された人は大変だ。捨てられないものが一番迷惑だ。アルバム。記念品。自覚して、あらかじめ処分しておかねば、だ。

みすず書房刊 石川美子