2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

文庫本の中の言葉

「−彼は思う。何が起きたかを書いたところで、本当に何が起きたのかが伝わりはしないのだ。報告書を書く経験においてはじめて、彼は、言葉がかならず役に立つとは限らないということを思い知る。伝えようとしている事物を、言葉が見えにくくしてしまうことも…

本の中の言葉

「月は夢想を誘う天体であり、その表面は銀色の鏡、あるいはレンズ、いや映写機の電灯の光の束を反射する凹面鏡だ。映写機から放たれるのは、時間を旅した末に白い銀幕にたどり着く月光めいた光だ。それが照らし出すのは、影絵芝居だ。そこに映し出される現…

本の中の言葉

「美女は二度死ぬのだそうだ。一度目は美を失ったとき。二度目はほんものの死。男性にとっては、性愛の対象であるべき女性が、無残に老いさらばえる事実ほど恐怖と嫌悪を感じるものはないのだろう。」「怖い絵」ジョルジョーネ『老婆の肖像』 中野京子著

本の中の言葉

「わたしたちは情報洪水の社会に生きているから、何かを<見る>前に、すでに<見せられ>てしまっている。そういう現実から出発せざるをえない。これは演劇をとりまくジャーナリズムと深く関連してくるのだが、現在の劇現場はおしなべてジャーナリズムと共…