文庫本の中の言葉

「−彼は思う。何が起きたかを書いたところで、本当に何が起きたのかが伝わりはしないのだ。報告書を書く経験においてはじめて、彼は、言葉がかならず役に立つとは限らないということを思い知る。伝えようとしている事物を、言葉が見えにくくしてしまうことも時にはあり得るのだ。」

「幽霊たち」P・オースター 柴田元幸訳 新潮文庫