新書の中の言葉

ー撮影前に錦之介さんを誘って祇園に飲みに行って、「チャンバラってどうしたらいいんだろうね」と聞きました。
 そしたら、「まあ、あんなもの、来るやつ斬りゃいいんだ」って簡単な理屈を言うんですよ。「主役は上手く刀を振ってさえいれば、カラミ(切られ役専門の役者)が上手く切られてくれる。あとは、彼らと呼吸さえ合わせられればチャンバラは大丈夫だ」と。それを聞いて随分と気が楽になりましたね。
 その「斬る」型の基本は「漢字の『米』を書くことだ」って言うわけです。まず、構えてから斜めに切り上げ、返す刀で斜めに切り下す。そして真横から斬り、最後は真上から切り下す。そうやって「米」の字を描くイメージで斬っていくと、綺麗な型になるということでした。

 「仲代達矢が語る日本映画黄金時代」 春日太一 PHP新書