詩集の中の言葉

 嫉妬は必要である。老いてくると嫉妬がなくなってくるが、これが怖い。情念があれば、嫉妬とのたたかいが必ず起こってくる。これを忘れてはなるまい。こんなことを言うと多くの人に嘲笑されるかもしれないが、鈴木孝さんにもつまはじきされるかもしれないが、夢の中の嫉妬がいちばんの薬である。重い老いの鎖が解けたような気がするものである。嫉妬は絵模様。一つの享楽でもある。ロマンスはめんどくさいが、嫉妬はよろしい。

「新・日本現代詩文庫98 鈴木孝詩集」 長谷川龍生