2012-01-01から1年間の記事一覧

本の中の言葉

人をそしる心をすて豆の皮むく こんなよい月を一人で見て寝る 本がすきな児に灯があかるし 入れものが無い両手で受ける あらしがすっかり青空にしてしまった 尾崎放哉 「ポケット俳句」 童話屋刊

本の中の言葉

「−アマテラス(天照大神)のアマに『天』の漢字を宛てて天空の意としたのは八世紀初めの帰化人史管の誤りで、アマの本義は海の意が強い。海人(アマ)だとか天の鳥船(アマノトリブネ)だとかが好例である。アマノコヤネノミコト(天児屋根命)を天空で屋根…

本の中の言葉

「到底たどり着けないと思っていた小説の最後の地点に、自分が立っていると気づいた時のあの気持ちは、不思議としか言いようがない。思わず『あれっ』と声を漏らし、本当にこれを自分が全部書いたとは信じられず、あたりをきょろきょろ見回している。書いた…

本の中の言葉

「緑色とは本来的に死者に属する色なのだと、トリュフォーは説いている。豪奢にして人気のない納骨堂の祭壇に飾られた、無数の小さな光の集まり。その静謐と神秘には、『大人は判ってくれない』の一本の蝋燭以来、トリュフォーが内面に携え続けてきた炎のシ…

本の中の言葉

「−1640年代にレンブラントの工房にいたホーホストラーテンは、1678年『絵画芸術の高等画派への手引き』の中でこう言っている。 人が絵画のこのもっとも高貴な部門で名誉を得ようと欲するなら、おの れ自身を完璧に俳優に仕立てなければならない。 …

週刊誌の中の言葉

住吉 今だから明かせること、ありますか。 濱 オウム事件は解明されていない部分がいっぱいあるんですが・・そうですね、サリンを作ってるという根幹情報は、早い段階で入手してました。 住吉 えっ、どうやって? 濱 オウムが選挙に出た時期がありましたよね…

本の中の言葉

「映画的なテクニックを無にした書き方は、作品の根本を道端に置き去りにしたまま進んでいくようなものだ。脚本とは映画作品の青写真として成立するものでなければならず、そのためにはスクリーン上で見聞きされるものをきちんと表現していなければならない…

戯曲の中の言葉

平吉 「夜、凧を上げるにはこれくらいの風が一番面白い。」 塩子 「夜も上げるんですか?」 清二 「こんな闇夜じゃなにも見えないじゃないですか。」 平吉 「月夜だってほとんど見えない。」 清二 「なにが面白いんですか、そんなの。」 平吉 「なにも見えな…

本の中の言葉

「『面白い奴だな。わしを竹光で斬るつもりか。・・・・わしを竹光で斬るつもりか。面白い奴だな。・・・・どっちがいいかな』と、たまたま傍らに立っていた私に声をかけられたので、僭越ながら『後の方がいいと思いますが』とお答えした。 こういった言葉の…

本の中の言葉

「私が黒澤さんの家へ見舞に行った時のことである。 応接間に車椅子で出てきた黒澤さんに三船さんの容態が悪いことを伝えた。 黒澤さんは暫く黙っていたが、遠くを見るような眼で、言った。 『三船は本当によくやったよ。三船に会ったら、そう言って褒めてや…

本の中の言葉

「−ある日、母に死にそうだと泣き言を言った。 『死んで見せなさい。好きなことをやっているのだから、その中で死ねれば本望でしょう。まだ余裕があるからそんなことを言えるんだ。死にそうなんてことは死んでから言いなさい』 わかってはいたがやはり言われ…

新聞の中の言葉

「賢者の言葉を紹介した本が売れている。ゲーテやニーチェ、カフカといった先人の言葉をコンパクトにまとめたものが多い。こうした中、巷でよく聞きかれるのが『ゲーテは今から200年も前の人なのにこんなにすごいことを言っていたのか。驚きました』『ゲ…

雑誌の中の言葉

「−伊丹万作は、『戦争責任の問題』という文章を発表してこう書いた。 「『だまさせれていた』といって平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。いや、現在でもすでに別のうそによってだまされ始めているにちがいないのである」 こ…

雑誌の中の言葉

「−記憶は保存されているというよりも、思い出すたびに電気が灯って再生されていると考えたほうがいい。つまり今つくられているものなのす。 その意味では、記憶は幻想です。『私は小さい頃の鮮やかな記憶を今でも覚えています』と人はよく言うけれど、その…

雑誌の中の言葉

「食べる時一所懸命食べるといいよ。 一所懸命、毎日を生きなさい。 未だに日常を大切にできない私への、それは、八十六年の生涯を十全に生ききった高峰秀子の遺言のように、今は思えてならない。 「高峰秀子の言葉 第十二回」斎藤明美 「波」7月号

詩集の中の言葉

「ー我々は言うだろう信じるところの人間は幸を得ると。 かの人はそのように宣言して 我は信じない何ものも。わけても『我々』という言葉を。 おれは返答した。 それはたいへん寒い。 かの人はそう呟いてからしばらく悲しそうに首を振っていたが 足をひきず…

戯曲の中の言葉

牧子「男って呑気なものですわね。いくつになっても空想があって・・・そして、その空想に相応した興奮があって・・・・」 「温室の前」岸田國士 ハヤカワ演劇文庫

文庫本の中の言葉

「−彼は思う。何が起きたかを書いたところで、本当に何が起きたのかが伝わりはしないのだ。報告書を書く経験においてはじめて、彼は、言葉がかならず役に立つとは限らないということを思い知る。伝えようとしている事物を、言葉が見えにくくしてしまうことも…

本の中の言葉

「月は夢想を誘う天体であり、その表面は銀色の鏡、あるいはレンズ、いや映写機の電灯の光の束を反射する凹面鏡だ。映写機から放たれるのは、時間を旅した末に白い銀幕にたどり着く月光めいた光だ。それが照らし出すのは、影絵芝居だ。そこに映し出される現…

本の中の言葉

「美女は二度死ぬのだそうだ。一度目は美を失ったとき。二度目はほんものの死。男性にとっては、性愛の対象であるべき女性が、無残に老いさらばえる事実ほど恐怖と嫌悪を感じるものはないのだろう。」「怖い絵」ジョルジョーネ『老婆の肖像』 中野京子著

本の中の言葉

「わたしたちは情報洪水の社会に生きているから、何かを<見る>前に、すでに<見せられ>てしまっている。そういう現実から出発せざるをえない。これは演劇をとりまくジャーナリズムと深く関連してくるのだが、現在の劇現場はおしなべてジャーナリズムと共…

雑誌の中の言葉

「凝り凝りと固まることを『ここり』、それが『こころ』に転じたそうなのである。つまり『こころ』とはもともと実体ではなく状態を指しているのだ。『こころが固まる』などとよくいわれるが、『こころ』が固まるのではない。固まること自体が『こころ』なの…

芝居の中の言葉

「いつかこの恋も、懐かしい思い出に変わる」 ミュージカル「アスペクツ オブ ラブ」劇団四季まあ、すべては思い出になるよね。すべて出会った人とは別れるのだから。

本の中の言葉

「恋をしている時は楽しくて 愛している時は、苦しい」 「恋の蛍 山崎富栄と太宰治」松本侑子著の、山崎豊栄の日記。

本の中の言葉

「十年ぐらい前からでしょうか、自分の年齢が、今、何歳なのか、ふとわからなくなることがあります。 本当の年齢をごまかしたいとか、齢をとったことを認めたくないというわけではありません。自分が今、何歳かということが私にとってはそれほど大事なことで…

週刊誌の中の言葉

「ー海外のシーズもテクノロジーも秀れているが、それらを日本の風土や美意識やユーザビリティにあわせて編集し、意匠を加え、おいしいものや使い勝手のいいものにするのが日本の仕事なのである。」 松岡正剛「百辞百物百景」週刊ポスト5.18号

本の中の言葉

「舞台芸術は、その表現の生命を、生成と同時に消滅していくところにおいている。またその素材を、生きた人間とするところで成りたたせる。いわばわれわれの生の<宇宙=永遠>の中の<一瞬>に対する抗いを基底とした表現形式ではないだろうか」 太田省吾 …

今日聞いた言葉

多摩美の守衛さんの大島さんから聞いた。 「山はいつまでも待っているけれど、年齢は待ってくれない」 山を愛する大島さんが、山で出会ったベテランの登山家から聞いたという。 高齢の人の遭難のニュースは他人事ではない。あせる気持ちはわかる。だけど、山…

本の中の言葉

「『自分が死ぬって大問題じゃないか』。たいていの人はそう思っているでしょう。でも、考えたらすぐにわかるじゃないですか。『自分がしんで、なにが大変か、死んだら、それを心配する自分がいないんだから、考えたってムダじゃないか』って。」養老孟司「…

画集の中の言葉

「−現実は常に光と影の交差する非合理な場所だ。讃歌の背後には常に悲歌が流れている。その悲歌に耳を傾けることなしには、表現の仕事はありえない。古代の中国人は、それを「悒」と呼び、ロシア人は「トスカ」と称した。」 五木寛之「五木玲子画集 天の花 …